スタンプカードや会員証、クーポン券などをデジタル化し、利用状況や顧客情報を管理・分析できるサービス「KINCHAKU」を提供する株式会社KINCHAKU。2018年に設立した、福岡を拠点に事業を展開するスタートアップ企業だ。日本のお財布まわりで進まないペーパーレス化への課題意識や、中小企業や個人経営の店舗に対する思いについて、事業推進マネージャーの原田佳樹さんに聞いた。
伸び悩む中小企業をデジタルの力でサポートしたい
―― まずは、株式会社KINCHAKU設立の経緯から教えていただけますか?
原田 KINCHAKUは、2018年7月11日に設立したばかりの駆け出しのスタートアップです。代表の新宮ドミは、ウズベキスタンで育って10年前に日本に来たんですが、そのとき、日本の中小企業や個人経営の店舗の数に驚きました。小さな企業が、合併することもなく、同じ規模や業績のまま大きく成長することなく、ずっと肩を並べている。そんなマーケットに課題意識を感じたんです。デジタルを活用すれば、中小企業が自ら顧客や売上を分析して効率化を図れるのに、多くの経営者が、ITリテラシーが足りないからとDX化に踏み込めていない。ノウハウさえわかれば、デジタル化は簡単にできるんだということを伝えて、彼らのビジネスの手助けをしたいと思ったのが、事業を始めたきっかけです。
―― 最初は、SETE MARESという社名でスタートしたそうですね。設立当初のサービスは今とはまた違うものだったのでしょうか。
原田 最初は管理会計のBIシステムを提供していました。現在の「KINCHAKU」のサービスを正式に開始したのは、2019年8月です。代表の新宮が、仕事上ホテルに泊まったりする機会が多かったのですが、日本では会員カードなどの紙文化が根強いことを目の当たりにしたんです。IT化が進んでいるにも関わらず、カード類やクーポンでお財布がかさばってしまう現状を前にして、日本で浸透が進んでいないモバイルウォレットアプリを活用したサービスの開発を進めました。
ちなみに、SETE MARESとはポルトガル語で7つの海という意味なんですが、その社名通り、当社はさまざまな国籍やバッググラウンドを持つ人が集まっているんです。ただ、電話対応の際などに「SETE MARESです」と伝えると、わかりにくくて聞き返されることが多くて(笑)。そういうこともあり、サービス認知度向上のためにも、社名を「KINCHAKU」に改名しました。
「キャッシュレスなのにポイントカードは財布から」の課題
―― 福岡が本社ですが、福岡で会社を始めた理由は何ですか? また、今はどのようなメンバーで事業を進めていらっしゃるのでしょうか。
原田 新宮も最初は東京に住んでいたんですが、福岡は「日本のシリコンバレーにしたい」と宣言するほど、スタートアップの支援に力を入れているんです。福岡は若い人口が増えていることもあり、会社を設立するのにふさわしい場所と判断しました。今、社員は10人です。海外を拠点にしているメンバーもいますし、僕も今、エバンジェリズムの活動のため沖縄を拠点に仕事をしています。月・金はミーティングのため会社に集まりますが、基本的にスーパーフレックス制度を採用しています。
―― 「KINCHAKU」と「ウォレットパス」はどのようなサービスなのか、改めて教えていただけますいか?
原田 「ウォレットパス」を中心とした顧客エンゲージメントサービスが、「KINCHAKU」です。僕らのミッションは、ウォレットレス化、ペーパーレス化を実現すること。日本ではモバイルペイメントや電子マネーが浸透していますが、一方で、飲食店やショップのスタンプカードやクーポンはまだ紙が多いのが現状です。QRコードやスマホで決済したのに、「ポイントカード、お持ちですか?」と言われると、またお財布を出さないといけないわけです。そこを解決できるのがウォレットパスです。
お店のポイントカードやクーポンを、ウォレットパスとして、スマホの標準アプリであるApple Wallet、Google Payといったウォレットアプリに追加できます。SUICAのICカードや飛行機の搭乗券をウォレットアプリに入れることができますが、それと同じことができるわけです。ウォレットパスとして追加できるのは、スタンプカード、クーポン、会員証、サブスクのパス、ポイントカード、イベントチケットなど。KINCHAKUの管理画面で、ウォレットパスのスタンプカードの発行や顧客情報管理、データの分析ができます。
個人経営の店舗でも簡単にデジタル化ができる
―― なるほど。お店や中小企業にとって、どんな点がメリットなんですか?
原田 何十万円の開発費用をかけることなく、パスの発行から運用までが低コストでできるのがメリットです。ウォレットアプリと連携する自社システムを開発できる大手だけではなく、個人経営の店舗さんや中小企業でも簡単にデジタル化を進められます。誰でも使えるクラウドサービスとして提供しているものとしては、KINCHAKUが日本初です。
パス通知機能(スマホに情報配信できる機能)もウォレットパスの特長です。たとえば、位置情報をベースに、お店のスタンプカードやクーポンを入れてくれているお客さんがカフェや飲食店の近くを通ったタイミングで、今日の日替わりメニューやキャンペーン情報を通知できます。もちろん、カスタマイズした通知を一斉に配信することも可能です。お客様への情報発信のためにアプリを作る企業さんもいますが、KINCHAKUを使えば何十万円もかけて自社開発することなく、通知機能が使えるのもメリットですね。加盟店さん用にスキャン用アプリを配布していて、スタンプの付与やクーポンの回収が、店舗で非接触でできるので、コロナ禍での衛生面の問題も解決できます。店舗のお客さんは、店頭に設置されたQRコードやお店のサイトに掲載されたURLから、スタンプカードやクーポンをスマホのウォレットアプリに簡単にインストールできます。ところでウォレット機能、ふだん使っていますか?
―― ウォレット機能はクーポンぐらいしか使ってないです。財布はいつもカードでぎっちぎちですね。
原田 そうですよね。僕もけっこうポイントをためるタイプなので、カードが多いです。美容室も、お店を変えるとそのたびに会員カードをもらいますよね。女性の方は美容系サロンとかも行かれるから、かさばって困っている方は多いと思っていました。
―― 病院の診察券もかさばりますよね。診察券もウォレットに入れられないんですか? 家に置いておくと、いざというとき忘れるし……。
原田 そこは僕らも目指しているんです。ウォレットパスの機能としては、会員証や予約券と同じように診察券も発行できますし、実際にアメリカのデューク大学では学生証としても使われているんです。僕らもそこに参入していきたいので、ニーズが高まれば開発していこうと思っています。
―― カードやクーポンをデジタル化できること以外に、「KINCHAKU」でできることはあるのでしょうか?
原田 KINCHAKUで顧客のデータを分析することができます。どのお客さんがどれくらいの頻度で来店しているとか、どれくらいスタンプためているのか、特典の効果はどうかといった測定ができます。CRM機能もあるので、顧客情報の管理もできます。KINCHAKUは、店舗さんがより戦略的に、リピーター獲得や売上拡大を目指せる土台でありたいと思っています。
名刺と資料を抱えて福岡のお店にひたすら飛び込み営業
―― サービスを始めた当初は、どのように顧客を獲得していったんですか?
原田 ITのスタートアップだから、さぞデジタルマーケティングを駆使して顧客にアプローチしているだろうと想像されることもあるんですけど、実はすごく泥臭いです(笑)。最初は、地元の福岡の店舗さんを、名刺と資料を持って飛び込みで回りました。こういうサービスを始めたので、お話をさせてもらえないですか?って。カフェの店舗さんだったらコーヒーの話をしたりしてじっくり話をして、1個のスタンプカードを導入していただくのも、すごく時間をかけて進めましたね。
―― お店だと、テレアポよりも実際に訪問したほうがお話を聞いてくれそうですよね。
原田 そうなんです。美容系のサロンさんとか、マニュアルで電話の営業は断るということになっているお店も多くて、電話ではあまり話ができないんですよね。店舗さんと仲良くなる目的も含めて、足を運んでいました。僕はちょうどサービスがローンチされた2019年8月にジョインして、当時はコミュニケーションマネージャーという役割だったんですけど、営業担当に任せきりにするわけではなく、チームで力を合わせて飛び込み訪問をしましたね。
―― 飛び込み営業がメインだったサービスリリース当初は、営業でどのような点を意識していましたか?
原田 SmartHRの宮田昇始さんのイベントに参加したとき、「サービスを大好きと思ってくれるお客様をまず10人獲得しよう」と言われたことがすごく印象に残っているんです。実際にKINCHAKUを売り出そうというときに、その言葉がぱっと浮かんできて。まずは10店舗、KINCHAKUを本当にいいと思って使ってもらえるお客様を獲得しよう、とがんばりましたね。それに、サービスを好きになってもらうためには、まずはこの人の話を聞きたいと思わせる人にならないといけないということも感じていました。その点では、僕自身、以前テーマパークダンサーをやっていたり、カスタマーサクセスマネージャーも、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドでキャストを経験していたりして、ホスピタリティや、人を喜ばせたいという気持ちに溢れたメンバーが多いんです。僕、見た目はけっこう怖いって言われるんですけど(笑)、実際は話しやすいねって言っていただけることも多いですね。そういった部分は、うちの営業上の強みかなと思います。
人から人へとつないでもらう流れでサービスが拡大
―― その次のステップとしてはどのような営業活動をされたんですか?
原田 お客様からの紹介で広がっていった部分も多かったです。福岡は、ナショナルチェーンよりも個人経営の店舗さんが多くて横のつながりもあるので、「あの店舗さんが使っているならうちも使ってみよう」って思ってもらえることが多かったです。そういう点では、飛び込み営業は最初のきっかけ作りとしてはいいやり方だったなと個人的にも思っていますね。その次は、SNSマーケティングや、アンバサダープログラムでのお客様からの紹介という形で広がっています。スタートアップ企業の間で顧客を紹介し合ったりもしていて、人から人へつないでもらう流れがメインですね。
―― スタートアップや新しいサービスを展開されている企業さんのお話を聞いていて感じるのは、ビジネスとしては最先端であるけれども、すごく血の通った営業活動をされていますよね。人間対人間の活動で、サービスが広がっているという印象です。
原田 僕も、そこはすごく伝えたかったんですよ。僕自身、KINCHAKUに入る前は、スタートアップってすごくキラキラしていて、有名な大学を卒業した人たちがバリバリビジネスをやっているというイメージを持っていたんです。エリートだからこそすごいことができるんだろうと思っていたんですけど、実際に入ってみるとそんなことはなくて。それぞれが抱えている課題や悩みも企業ごとにありますし、スタートアップだからって、イケイケで、リテラシーがない人を相手にしないなんていうことはあり得ないので。みんな泥臭く地道に仕事をしているということを、入ってから学びました。
―― 今まで世の中になかったサービスだからこそ、相手に丁寧に話してその価値を伝えないといけないですしね。
原田 そうですね。ブランド名や会社名が売れていないからこそ、一から信用を獲得しなければいけないので。ひとりの人間・原田佳樹としてお客様に向き合って、しっかり課題をヒアリングしてお話をさせていただいていますね。
―― 2019年8月にスタートされたということは、半年くらいでコロナの影響が出始めたと思うのですが、リリースして以来のKINCHAKUの導入状況はいかがですか?
原田 コロナをきっかけに、デジタル化や、新しいことを始めないといけないと思い始めるオーナーさんが増えた印象です。コロナ禍で、個人経営のカフェとか飲食店さんは打撃を受けましたが、ウォレットパス型の回数券やサブスクリプションなどの新しい取り組みを実施することによって、再集客や継続的な利用を図りたいと考えるオーナーさんが増えたと感じました。
国内でウォレットパスを「当たり前」にしたい
―― 貴社にとって、また原田さんにとってこれまで最大の「開拓」の経験は何ですか?
原田 やっぱり、KINCHAKUというサービスを広げていく活動ですね。まずは、これまで日本で普及していなかったウォレットアプリを活用したサービスを市場にのせていく橋のような存在になれたと思うので、そのマーケットをどう掘り起こしていくのかという部分がこれからの課題です。日本のお財布のペーパーレス化、デジタル化を進めるということに関しては、開拓ができているのかなと思います。
―― 最後に、KINCHAKUとしての今後の展望を教えてください。
原田 今後、日本国内でKINCHAKUの導入数を増やして、国内でウォレットパスが当たり前のものとして普及するように活動を進めていきます。加えて、コロナが落ち着いたタイミングでのアジアを中心とした海外進出も考えています。今、自社システムとウォレットパスを連携できるWALLETPASS.JPというAPIサービスにも注力しています。大手さん向けのサービスですが、こちらも強化を図っていくのが、近い将来の目標ですね。
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