近年、営業力強化のために人員を確保したくても人手不足で難しいと悩む企業や、新規獲得営業がうまくいかず売上に伸び悩んでいる企業が増えています。
また、自社のさらなる営業力を高めたいなどを理由から、営業代行のニーズが高まりつつあります。
営業代行を利用することで売上アップが期待できるなどのメリットがありますが、営業代行に必要な契約書についてイマイチ分からないと思う方は多いのではないでしょうか。
本記事では、営業代行における主な契約形態をはじめ、結ぶ際の重要ポイントや注意点なども解説します。
営業代行で結ばれる契約形態とは?
営業代行を依頼する際は営業代行会社やフリーランスの担当者と契約を結び、業務を依頼することが一般的です。
営業代行で締結される契約には、「請負契約」「準委任契約」「委任契約」の3つの契約形態があり、総称として「業務委託契約」と呼ばれています。
そのうちの「委任契約」は契約代理などに関する契約であるため、営業代行は「請負契約」と「準委任契約」のどちらかで契約します。
それぞれの契約では報酬が支払われる条件やタイミングが異なるため、特徴などを理解していくことが大切です。
ここでは、それぞれの特徴について見ていきましょう。
請負契約
請負契約とは、契約で定められた成果の達成を条件として報酬を支払う成果報酬型の契約形態です。
請負契約の場合は報酬対象が成果によるものなので、納期までに契約で決められた成果(売上)を達成できない場合は報酬は発生しません。
営業代行において、請負契約は特に高額な商品を扱うものや契約金額が高額な場合に採用されることが多い契約形態です。
準委任契約
準委任契約とは、業務の遂行を条件として報酬を支払う契約形態です。
準委任契約の場合、報酬の対象は成果ではなく業務遂行になるので、業務遂行のために働いた時間や労働力に対して報酬が支払われます。
準委任契約が適用される業務の種類としては、法律業務のみ委任契約になりますが、法律業務以外の業務全般が準委任契約に該当します。
営業代行において、メールやDM送付、テレアポなどの営業代行業務の場合に採用されることが多い契約形態です。
営業代行に必要な契約書とは?
営業代行を依頼する際、必要不可欠なのが契約書の存在です。
営業代行を利用するのは1回だけで終わるものではなく、継続的に営業代行を依頼するのが一般的です。
その際、用いられる契約書として、「業務委託基本契約書」と「個別契約書」の2つが挙げられます。
ここでは、それぞれの契約書の特徴を解説します。
業務委託基本契約書
業務委託基本契約書とは、業務を依頼する委託者と業務を引き受ける受託者の間で締結される基本的な契約書のことです。
業務委託に関する一般的な内容や報酬条件、秘密保持などの基本事項を定めるものなので、具体的な内容は記載されないケースもあります。
一般的に業務委託基本契約書は同じ委託先に継続して業務を依頼する際に使用されます。
営業代行の仕事は継続依頼が多いため、よく締結する契約書です。
個別契約書
個別契約書とは、業務を依頼する委託者が業務の一部を業務を引き受ける受託者に委託する契約書です。
業務委託基本契約書をベースとして作成される契約書であり、特定の業務に関する契約期間や納期、報酬など、具体的な業務内容を定めているのが特徴です。
個別契約書は業務に関する詳細な事柄まで取り決める契約書なので、特定の委託業務の契約で使用されることが多くあります。
営業代行で契約書を結ぶときの重要ポイント
契約書は、委託者と受託者の間で取り決めた契約内容を明確にすることで、双方の認識の齟齬をなくし、契約書の内容に双方が承諾した証明書としての役割があります。
営業代行で契約書を結ぶ際に押さえておきたいポイントは下記の9つの事項です。
- 委託業務の内容を明確化
- 営業の進め方・情報のやり取りの決め事
- 報酬形態・支払い日・方法を明確化
- 成果条件
- 経費の取り扱いの明確化
- 契約期間の明確化
- 業務進捗の取り決め
- 秘密保持に関する取り決め
- 損害賠償の取り決め
契約書には、上記の重要ポイントがしっかり明記されており、自身が納得していることが重要です。
ここでは、各重要ポイントを詳しく解説するので、営業代行で契約を結ぶ際に役立ててください。
委託業務の内容を明確化
委託業務内容を明確化しておくことは、契約の際の重要なポイントの一つです。
委託者が依頼したい業務内容と受託者が理解している業務内容にズレがあると、営業代行がうまくいきません。
「新規獲得のアポイントまでの業務を依頼したいのか」「商談から契約までの業務を依頼したいのか」など、業務の範囲を決めて契約書に明記することが重要です。
委託したい業務はどんな内容でどこまでの業務を依頼したいのかなどを明確にし、トラブルにならないようにしましょう。
営業の進め方・情報のやり取りの決め事
契約の際の重要ポイントとして、営業の進め方や情報のやり取りの決め事を定めておくことも挙げられます。
営業代行は、受託者が自社の商品やサービスを代わりに営業をすることをいいます。
もし、受託者が詐欺まがいな営業方法で営業代行を行っていた場合、自社は大きな損害を受けてしまいかねません。
そのような事態を避けるためにも、どのように営業を行うのかを決めておく必要があります。
また、受託者との情報共有や連絡を取る手段もあらかじめ決めておくこともおすすめです。
報酬形態・支払い日・方法を明確化
報酬形態・支払い日・方法を明確にしておくことも肝心です。
営業代行の報酬形態は、主に「固定報酬型」「成果報酬型」、固定報酬と成果報酬が複合した「複合型」の3種類があります。
たとえば、人員が必要な場合や長期的に業務を依頼したい場合などは固定報酬型が採用し、短期的な案件や成果に対するニーズが高い場合は成果報酬型を採用すると良いでしょう。
また、報酬形態だけではなく、支払い日や支払い方法なども契約書に明記してもらうこともポイントです。
成果条件
成果条件を決めておくことも、契約する際の重要なポイントの一つとして挙げられます。
特に前述した請負契約のような成果に対して報酬を支払う場合は、成果条件が重要視されます。
報酬発生の条件となる成果(売上)の金額や契約人数、納期など、成果に関わる詳細な条件を洗い出し、契約書に詳しく明記してもらいましょう。
経費の取り扱いの明確化
契約を結ぶ際の重要ポイントとして、経費の取り扱いの明確化することが挙げられます。
主な経費は、交通費や印刷代、宿泊費、通信費などがありますが、「経費をどちらがどこまで支払うのか」「経費はどのタイミングで支払うのか」など、経費の取り扱いを明確化しておく必要があります。
受託者が営業代行を行う上でかかった経費をどうするのかをあらかじめ決めておけば、トラブルを回避できるでしょう。
契約期間の明確化
契約期間を明確にすることも、契約する際に押さえておきたいポイントです。
たとえば、業務委託契約の場合は、納期を契約期間として継続する際に毎回契約書を直す方法や、長期契約を前提に契約期間を設定して契約締結する方法があります。
営業代行の契約だと3ヶ月・6ヶ月・1年間の契約期間で解約の申し出がない限り自動更新というスタイルを採用していることが多いです。
委託する業務に関して、いつからいつまでの契約なのかを明確化することで、自社でも把握しやすくなります。
業務進捗の取り決め
業務進捗の取り決めをしておくことも、欠かせない要素の一つです。
業務進捗を把握したい場合は報告スケジュールを設け、進捗や成果を週次・月次で共有してもらうように契約書に盛り込むことが可能です。
また、状況が変わった場合や新しい要望が生じた場合は、変更要求を柔軟に対応できる期間やどのように連絡するかなども取り決めで設けられます。
業務進捗を通じて定期的にコミュニケーションを図ることで双方の信頼関係が築きやすくなり、業務の成功につながるでしょう。
秘密保持に関する取り決め
秘密保持に関しても取り決めておくことがおすすめです。
営業代行する際、自社の商品やサービスに関する社外秘の情報や顧客情報を共有する必要があります。
情報漏洩を未然に防止するためにも、秘密保持に関する取り決めをしておかなくてはいけません。
企業の情報漏洩問題は企業の信用を失墜させてしまうので、情報の取り扱いには特に注意が必要です。
機密情報をどのように扱うのかについて、契約書の秘密保持条項でしっかりと定めるようにしましょう。
損害賠償の取り決め
損害賠償の取り決めも、契約時の重要なポイントの一つです。
損害賠償責任とは、故意や過失によって他人の身体や財物に損害を与えた際、その損害に対して金銭で賠償する責任を負うことです。
万が一、損害が生じてしまった場合の損害賠償の範囲、賠償の限度額、損害の通知と軽減義務、保険加入などを決めておきましょう。
損害賠償の取り決めは、契約当事者がリスクや責任を明確に理解し、納得していることが大切です。
営業代行で契約書を結ぶ手順
営業代行で契約書を結ぶ際は、どのような手順で行われるのかと気になる方は多いのではないでしょうか。
営業代行の契約締結までには、主に3つのプロセスがあります。
以下で解説する3つのプロセスを理解することでスムーズに契約締結まで進められるようになるでしょう。
営業代行会社と打ち合わせ
最初のプロセスとして、営業代行会社と打ち合わせを行います。
打ち合わせでは委託者が求めるニーズや納期、契約内容、決め事などを受託者である営業代行会社と確認をします。
初期段階で認識のすり合わせを行っておけば、認識の相違があるまま契約締結してしまうなどの事態を避けられます。
また、最初の打ち合わせを入念に行っておくと、契約書作成や確認のフェーズがスムーズに進みます。
契約書の内容について確認
打ち合わせを終えたら、契約書の内容を確認します。
打ち合わせで取り決めた内容をもとに作成された仮契約書を、業務内容や契約期間、業務範囲、報酬と支払い条件、機密保持、損害賠償などを確認しましょう。
その際、後々トラブルになってしまうことを回避するためにも各項目が打ち合わせで決めた内容と相違がないかを確認することが大切です。
契約書の内容は双方の合意に基づいて慎重に検討されるべきであり、必要に応じて専門家から法的アドバイスを受けることも一つの手です。
もし、契約書の内容に関して変更や修正したい場合は、本プロセスで交渉するようにしましょう。
契約書を作成し署名・押印
双方で契約書の内容を確認して納得ができた場合は、契約書の作成と署名・押印を行います。
PDFなどのデータや電子契約書の場合は不要ですが、書面の契約書の場合は契約書の印刷や製本作業が必要です。
契約書を2部作成したら、契約書2部に署名・押印を行います。
双方の署名・押印が終わったら1部は委託者のもの、もう1部は受託者のものとしてそれぞれ大切に保管します。
営業代行の契約書を結ぶ際の注意点
営業代行の契約書を結ぶ際、注意点しておきたいポイントは以下の2つです。
- 収入印紙が必要な場合がある
- 契約書の日付は契約日を書く
ここでは、注意すべきポイントを詳しく解説します。
収入印紙が必要な場合がある
契約書によって収入印紙が必要な場合があることには注意が必要です。
営業代行の契約書のうち、準委任契約の場合は収入印紙は不要ですが、請負契約の場合は課税文書の「第2号文書」に該当するため、収入印紙が必要になります。
第2号文書は「請負に関する契約書」であり、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することで成立する契約をいいます。
収入印紙の金額は、以下のように契約金額によって異なります。
- 1万円未満:非課税
- 1万円以上100万円以下:200円
- 100万円以上200万円以下:400円
- 200万円以上300万円以下:1,000円
- 300万円以上500万円以下:2,000円
- 500万円以上1,000万円以下:1万円
- 1,000万円以上5,000万円以下:2万円
- 5,000万円以上1億円以下:6万円
- 1億円以上5億円以下:10万円
- 5億円以上10億円以下:20万円
- 10億円以上50億円以下:40万円
- 50億円以上:60万円
- 契約金額の記載のないもの:200円
契約書の日付は契約日を書く
契約書の日付にも注意しなければなりません。
契約書に署名・押印をする際に契約日を記入する箇所がありますが、そこには契約日を書くようにしましょう。
契約日の記載がないと契約書が無効になってしまうわけではありませんが、契約日の記載がなければいつ契約したのか不明になっていまい、後々トラブルに発展する恐れがあります。
そのような問題を避けるためも必ず記入しておくことをおすすめします。
営業代行の契約書でよくある質問
営業代行の契約書に関する情報を解説してきましたが、気にある点や不安なポイントがある方はいるのではないでしょうか。
ここでは、営業代行の契約書に関して比較的多い質問を3つ紹介します。
契約書は電子契約でも可能?
契約書は書面ではなく、電子契約でも締結可能です。
電子契約を希望する際には、電子契約でも問題ないかを契約相手に確認した上で判断することが大切です。
電子契約の場合は電子ファイルを通しての契約となるので印紙税が非課税となり、費用を抑ええられるなどのメリットがあります。
契約書は郵送で大丈夫?
契約書は、当事者間で合意があれば郵送しても問題ありません。
契約書を郵送する場合、どちらかが先に2部署名・押印をして相手方に郵送し、その後相手方が2部署名・押印をした上で1部だけ返送するという流れが一般的です。
そのため、直積的に行う契約や電子契約と比較すると時間と手間がかかり、急いでいる場合には向かないかもしれません。
契約書に捺印は必要?
契約書に捺印がないと契約ができないわけではありませんが、契約の有効性を示すためには捺印はあったほうが無難です。
契約書における捺印は、契約書がその契約内容に同意したという意思の証明であり、捺印をもってその契約は成立したことが第三者から見ても証明になります。
より有効性を示したい場合や今後何かあったときのことを考えておきたい場合は、捺印をしておくと良いでしょう。
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まとめ
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